光の川

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7歳のあの日、私は姉を失った。それは唐突にやってきて、私の小さな力では何も変えることができなくて、ただ姉の眠るその傍で「もう2度と姉と話すことはできないのだ」ということだけが理解できた。涙すら出ることなく、姉はこの世にもういないのだ、8つ離れたあの心強い背中を見ることはできないのだ、そう思うとひどく頭痛がし、目の前が暗闇に覆われるような感覚がした。 8年後、私は姉が好きだと言った場所へ向かった。とある大きな川にかかる大きな橋。その橋をバスに乗って姉は通学していた。夏休み、雲ひとつない晴天の中私はバスに乗りその光景を見た。 どこまでも広がる蒼く透明な川。降り注ぐ太陽の光が反射して、川の水面にさらに白い光の川を作り上げている。視界の先に広がる川にはいくつもの橋が架けられており、そこを車がスピードを出して走っていくのが見える。バスの中には私の他に2.3人の人が乗っているのみで、私は息をするのも忘れてその光景に見入っていた。 どこまでも続いているかのように見える川、いくつもの線や円を描いて川にかかる橋、太陽の光が降り注ぎ川の中にできた白い光の川。そのどれもが目に焼き付き唐突に理解した。 姉はもういないのだ。 この川も、橋も、光も2度と姉は見ることができないのだ。そして私も2度と姉に会うことはできない。あの日、行ってきますとだけ言って帰ってこなかった姉。いつも笑って一緒に宿題をしてくれた姉。それはただ私の記憶の中にあるだけで、その記憶も8年前から変わることはない…。 涙が知らずに流れていた。どこかで聞いたことがある。その人を思って流した涙は、その人を天国へ導く大きな川になるのだと。その川を船で渡ることでその人は天国に行くことができるのだと。私の涙は姉を導く川に流れ着くことができるのだろうか。涙が流れ続ける。あの日、姉との別れの時襲った暗闇はいつのまにか消え去っていた。 私はきっと今初めて姉の死を受け止めることができたのだ。
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