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「葵を、妹を生き返らせて、元の世界に戻してください」
「お、お兄ちゃん」
優が葵の両腕を掴んだ。
「葵、お前はちゃんと、戻って生きるんだ」
「お、お兄ちゃんは?」
葵は泣きそうになって言う。
「お兄ちゃんはもう、戻らない。ここで暮らす」
葵は優に抱き付いた。
「やだ! お兄ちゃんも帰ろ!」
優がじっと葵を見つめて言った。
「葵、お兄ちゃんはずっと自分の生きている意味を探してた。人のために死に続けたのも、結局、人に必要とされたかっただけだ。誰かの役に立ちたい……。それは、自分が生きるために必要だったんだ」
「お兄ちゃん……」
「人は自分のためだけには生きられない」
優は強い目で言った。
「誰かのために生きる。それが自分のために生きることと同じなんだ」
お兄ちゃんは、すごく、深いことを言っている。
葵はそう思った。
「……だから今回の話は、僕にとって夢みたいに嬉しい」
「お兄ちゃん……」
「葵はいい子だ。生きて、自分の人生を歩んで欲しい」
葵は泣いた。
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