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お兄ちゃんがまた死んで、帰って来た。
「お兄ちゃん! また死んであげたの?」
「うん……」
「今日は何?」
「水死……」
びしょ濡れの優は呟いた。
葵はため息を吐いた。
「んで、何回目になるっけ?」
「えっと……5いや6回目?」
「今日は誰の代わり?」
「うんと、4丁目の吉川のおじいちゃん」
「吉川のおじいちゃんってもう90近いでしょ? 代わりに死んであげなくてもいいじゃん!」
優が困った顔をして言った。
「だって、まだ死にたくないって……」
「あの業突くじじい! お兄ちゃんみたいな若者を代わりに死なせるなんて!」
葵はぷんぷんと怒った。
「葵……誰だって死にたくないよ」
「んじゃ、なんでお兄ちゃんは死んであげる訳?」
優はますます困った顔になって、
「だってかわいそうだから……」
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