私を映す鏡 【短編】

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 月曜日の朝、台所でお弁当を作り始めた。  圭太の分、自分の分、そして青木の分。  普段使っている圭太と自分のお弁当箱の他に、圭太より一回り大きなタッパーに青木の分のおかずとご飯を詰めた。  青木が美味しいと言った、長ネギ入りの出し巻き卵焼きと塩麹の鳥の唐揚げ、それにひじき煮とほうれん草の胡麻和えにミニトマトを添えれば、見た目も綺麗。 「おはよう。あれ⁉ 弁当箱デカイの何?」 「あっ、これ? 後ろの席の子がね、食べたいって言うから作ったの。代わりに今度のお祭りの日に奢ってくれるんだって」 「とうとう、彼氏が出来たのかよ。くそー! リア充め」 と、私の頭をガシガシ撫でる。 「イヤー、髪の毛がぐちゃぐちゃになる」  本当は彼氏じゃないけど否定しなかった。 「俺に彼女いないのに……。年下に先を越された」 「なに? 妬ける」  圭太の様子を覗き込んだ。 「妬けるね。面白くない。娘が嫁に行く時ってこんな気分なんだ」  妬けるって言ってもらえても、娘の扱いか……。 「私が嫁に行ったら寂しい?」 「もちろん寂しいよ」 「圭太の老後は私が面倒見てあげるよ。安心して」  冗談とも本気ともつかない言葉を口にする。  圭太は、目を細めて「頼もしいな」と言った。  
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