私を映す鏡 【短編】

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 鏡に映り込んだ自分の顔は、年々、母に似てきた。  優しくて、綺麗で働き者の母は、私の自慢。  生前の母は嬉しそうに父との惚気話を私に語り聞かせてくれた。  母さんが、学生の時は結構モテモテで、みんなが狙っていたサッカー部のキャプテンにも告白された事があるのよ。でも、断ったわ。  幼馴染の悠太の事が好きで、ずっと言えずに片思いしていたから……。  幼馴染の心地良い関係を崩すのが怖かったのよね。  下手に告白をして断られたら、今までの関係が崩れちゃうでしょう。  でもね、サッカー部のキャプテンに告白された話を、人づてに聞いた悠太が慌てて告白してくれたの。嬉しかったわ。  それからは、ずっとラブラブで看護短大を卒業後すぐに結婚して、そして、産まれたのが繭子あなたよ。  繭子は、私と悠太の愛の結晶なの。    そんな事を言って、私をギュッと抱きしめてくれた母は、愛する人を失った時どんなに辛かったのだろうか。  幼い私を抱えて、この先も生きていかなければならなかった。  母の泣いている姿を見た事が無かった。  優しくて、綺麗で働き者の母。  学生時代の母の姿を捉えた写真は、ストレートのロングヘアの黒髪に少し勝気で大きな瞳が印象的でとても綺麗。  鏡の中の私は、写真の中の母のように、ストレートのロングヘアにして、母の笑顔を真似てみたり、すました時の表情や首をかしげる時の角度まで、母になりきるように振舞う。  今日は、母の三回忌。  今の私は母に似ているだろうか?  鏡に問い掛ける。
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