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お昼休みのざわざわとした教室で、紗江と机を向かいあわせに付けてお弁当を広げていた。
友達と購買部から戻ってきた青木の姿が目に入る。
松葉杖が取れて、少し足を引きずりながら歩けるようになっていた。
自分の席にドカッと腰を下ろして、焼きそばパンを頬張り、500mlパックにストローを差したコーヒー牛乳を飲みながらコッチを見ている。
視線を感じて落ち着かない気持ちになり、自分から青木に話し掛けた。
「ジッと見てるけど、なに?」
「高瀬の弁当、うまそうだなって、玉子焼き食いたいなぁ」
と、わざとらしく言って、チラッと人の様子を伺っている。
青木なんて、バスケ部で背も高くて、ぜんぜん可愛くないはずなのに不覚にもチョット可愛いって思ってしまった。
お弁当箱の蓋の裏に卵焼きと鳥の唐揚げを一個づつ乗せて、青木の机の上に置いた。
「あげるよ」
「マジ! いいの? やったー!」
私が頷くと青木が親指と人差し指に挟んでパクンと卵焼きを口に入れた。
「うまっ。なに入ってんの?」
人の返事も待たずに今度は鳥の唐揚げをつまんで口にパクン。
「これも柔らかくてうまい。高瀬、料理上手いな」
満足気にモグモグしながらそんな事を言う。
大きな体で子供みたいと思った。
「なあ、高瀬、俺に今度弁当作ってくれる? 高瀬の弁当メッチャ食べたい! お願い。お礼にお祭りの時に奢るからさ」
と、両手をパンッと合わせ、拝むようにして頭を下げられ、どうしていいのか、困って紗江の方を見るとニヤニヤしている。
ひとつ息を吐き出した。
「いいよ。作ってあげる。月曜日でいい?」
「マジ? やったぁ!」
ホント、大きな子供みたいだ。
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