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お昼休みを知らせるチャイムが鳴ると一斉に教室内がざわつく。
机の横に掛けて置いたバックから保冷剤の入ったランチバックを取り出し、小さいお弁当箱を自分の机に上に置き、大きいお弁当箱が入ったままのランチバックごと、後ろの机の上にそっと置き、青木の様子を伺う。
青木は、満面の笑みを浮かべ、私とランチバックを交互に何回も見ている。
「ありがとう、マジ、嬉しい!」
ランチバックの中からお弁当箱を取り出し、蓋を開けた。
「すっげー。美味しそう。この前の卵焼きと唐揚げも入れてくれたんだ。いただきます」
付けて置いた割箸を割って、卵焼きをつまみ口に運んだ。
「おかず感があっていいよな。うちの卵焼き甘いんだよ。アレおかずじゃなくておやつだよ」
美味しそうに食べている様子にホッとしていると、紗江がいたずらな瞳をかがやかせ、青木に向かって話し掛ける。
「いいなぁ。繭子の手作りのお弁当。私も食べたいなぁ。青木、唐揚げちょうだい」
「イヤだ。俺のだし」
「いいじゃん! ケチ! お祭りに誘ってあげた御恩を返せ!」
「それはそれ、これはこれ、バスケ部の田中を連れて行くからいいだろ?」
「田中君、マジ⁉ いいよ、いいよ。許す!」
紗江は私の方を向き、ピースをしている。
そして、私の耳元にコソッと「Wデートだね」と言った。
デートと言う言葉にドキンとした。
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