私を映す鏡 【短編】

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 チャイムの時間5分前に教室に入って席に着いた。  はぁーっと、ため息が漏れる。 「おはよう。なんだ、テンション低いな」 「おは。青木はテンション高いね」 「おう、足がだいぶ良くなって、包帯じゃなくてネットの靴下みたいのだし、ぜんぜん楽!」 「そう良かったね」  青木の足を見るとスリッパから上履きになっている。  踵を踏んでるからスリッパと変わらない気もするけど……。 「だから、土曜日は、バッチリ歩けるから楽しみだ」 「そだね」 「繭子も私も浴衣で行くから楽しみにしてね」 と横から紗江が言った。 「マジ⁉」  青木が私の背中をシャーペンのキャップの方でツンツンとつつく。 「なに?」  青木が声を潜めて言った。 「なあ、迎えに行ってもいい?」 「えっ!うちに⁉」 「そう、浴衣だと危ないから」 「じゃ、洋服で行く」 「いや、浴衣着て来て!」 「もう、意味わかんない」 「浴衣姿の高瀬が、可愛すぎて絶対にナンパされるから危ない」  そんな事を言われ、びっくりして青木を見ると真っ赤な顔をして窓の方にプイと向いた。 「ねえ、繭子、良かったね。迎えに来てくれるって!」  聞き耳を立てていた紗江が口を挟む。 「う、うん」  私は思わず頷いた。  
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