40人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
ざわざわと賑わう教室に足を踏み入れ、クラスメイトに「おはよー」と声を掛けながら、窓際の後ろから2番目の自分の席を目指し足を進める。
私の後ろの席に座る青木隼人が、唇を尖らせて、つまらなそうに窓の外を眺めているのが目に入り声を掛けた。
「おはよー」
「おはよ」
「いつもギリギリなのに今日は早いね。バスケ部は?」
「えー、足、捻挫したから休み。もう直ぐ引退なのに最悪だよ」
視線を落とすと青木の足には、グルグルと包帯が巻かれスリッパ履きだった。窓には松葉杖が立て掛けてある。
自分の机の上にカバンを置いて、横座りに椅子に腰かけ青木と話を続けた。
「大変じゃん。朝、どうやって来たの?」
「母ちゃんが、車で送ってくれた」
青木は、照れくさそうに鼻の頭をポリポリと、右手の人差し指で搔きながらボソッと言った。
「良いお母さんだね。治ったら家の事を手伝ってお返ししてあげなよ。お風呂洗ったりとかさ、きっと、喜ぶよ」
「へー、高瀬は手伝ったりしているんだ」
「うちは、両親共にいなくて、叔父さんと暮らしているから必然的に家事は私なんだ」
青木が、ハッとした表情になり、「あ、ごめん」と言った。
「こっちこそゴメン。なんか湿っぽくなっちゃって」
肩をすぼめながら言うと青木が優しい目をして、スッと手を伸ばし私の頭をポンポンと軽く叩く。
そんな事、圭太以外の男の人にされたのは、初めてで、なんだか急に恥ずかしくなって、顔がカーッと熱くなるのが自分でわかった。
最初のコメントを投稿しよう!