私を映す鏡 【短編】

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「おはよう、繭子。ナニ! あんた、顔、真っ赤」  隣の席の西村紗江が、席に着くなり余計な事を言う。 「おはよ」と短く返しただけで、私は前に向き直り自分の机にうつ伏して顔を隠した。  紗江が顔を寄せ、私の耳に内緒話をするように手を当て聞いてきた。 「青木とアオハル?」 「違う……驚いただけ」  ぽそっと答える。  紗江は、ふーんと言った後、急に大きな声でしゃべり始めた。 「ねえ、来月の最初の土日お祭りでしょ! 繭子、一緒に行こうよ。他にも誘った方が楽しいよね」  まだ、顔が熱い感じがして、机にうつ伏したまま「いいよ、任せる」と返事をした。  この安易な返事が、その後、直ぐに後悔する事になる。 「青木もお祭り行こうよ」  紗江が青木を誘っている。 「2週間後なら足も良くなっていると思うから、いいよ、行くよ!」 「えっ、青木、怪我したの? うわっ、かわいそー。私と繭子で手伝える事があったら言ってね。その代わりにお祭りの日にイケメン連れて来て!」    うっ、なんか、青木を巻き込んでいるというか、私が巻き込まれているというか、紗江のおせっかい。    わかっている、紗江は悪くない、親切心で言ってくれている。  本当は、好きな人がいるって、紗江に言えばいい。  でも、自分の叔父さんが好きだなんて、誰にも言えない。    
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