私を映す鏡 【短編】

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 学校帰りに駅前のスーパーに寄って、買い物を済ませてから家に帰る。  圭太と暮らし始めてから定着したルーティン。  帰りの電車の中でスマホのレシピのサイトで検索してメニューを考える事も多い。  毎月渡される食費をやりくりして、美味しい物を作る。  まるで、圭太の奥さんみたいだなって思い、ひとりでテレてしまった。  今日は、鶏もも肉がお買い得だったから、4枚入りの大きいパックを買った。2枚取り出し鶏肉を塩麹で下味をつけて、冷蔵庫に仕舞い。残りの2枚を小さめに切って、半分を冷凍庫、半分は、今夜の夕飯で親子丼にする。刻んだ玉ねぎと出汁で煮て、砂糖.お酒.お醤油で味付け、一旦火を止める。圭太が帰って来たら温めて卵を落とせば出来上がり! ほうれん草とワカメのお味噌汁とキャベツの塩麹モミを付けて完璧。  下ごしらえを終えて時計を見ると、まだ圭太が帰って来るまで時間がありそうだ。  紗江がお祭りに行こうって言っていたから、タンスから浴衣を出して虫食いとかチェックしておこう。  父や圭太の両親が残した家は、2人で住むには少し広い4LDK。使っていない部屋の押入れタンスをゴソゴソ探すと母が残した浴衣が出てきた。  イマドキの柄じゃないけど、ロウケツ染めの珍しい作り、上品なのに個性的。Tシャツの上から袖を通すと鏡で見たくなった。    腰紐で軽く形を整え、洗面所に移動した。  自分の姿を鏡に映す。  鏡の中にいるのは、母の浴衣姿の私。  
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