君がいた夏

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 けれど、長くは続かなかった。  夏が終わった頃、彼は学校を休むようになった。  白血病だった。  毎日のようにしていたショートメールのやりとりが、ある時を境に途絶えてしまった。私からいくらメールを送っても、彼からの返事はない。 「濱崎くんに何かあったんだ」そう考えて、居ても立っても居られなくなった私は、彼の病院へ向かった。不安で、私は心臓が張り裂けそうな思いだった。受付をすませ、彼のいる病室へ顔を出す。 「濱崎くん……」 「……水瀬、どうしてここに?」 「メールが来なくなって、心配したんだよ」  彼は大きな溜息をついた。 「顔……ひどいことになってるぞ」  彼に言われるまで気が付かなかった。私の顔は、涙でぐしょぐしょに濡れていた。持っていたハンカチで涙を拭う。 「俺、年が越せないかもって。またお前に、かわいそうな子だからって言われたくないから、黙っていようと思ったのに」  私は思いっきり首を横に振った。 「もう言わないよ。濱崎くんのおかげで変われたの。濱崎くんの笑顔に助けられたんだよ。この先も私の物語を書いていく。何年、何十年かかっても必ず叶えてみせる。だから、諦めないで」  私の目から零れ落ちる涙を、彼は笑顔でそっと拭ってくれた。 「水瀬ならなれるよ、作家に――俺、見ているから」  あれから二十年。  彼の笑顔と言葉に支えられ、私はついに、夢を現実のものにした。  雲間から指す陽光に、彼の面影を感じ取る。 「約束、ちゃんと守ったよ。見てくれているかな」  心の中の言葉をそよ風に乗せ、空を仰いだ。
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