プロローグ

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昔は半妖なんて山ほど居た。でも文明開花、経済成長などなどの時代の流れで妖怪と人間の中にできた溝を埋めることは叶わず、遂には事実上の決別、妖怪は隠れるように生きることになった。 そんなご時世で生まれた半妖のこの僕は、めちゃくちゃ珍しい存在。流石に純血の妖怪ほどの妖力や寿命は得られなかったけれど、人間が社会の覇権を握るこの時代ではかえって好都合だ。 「でも左腕だけ目が出っ放しだぞ」 「半妖のくせに変化(へんげ)が下手なんじゃね?」 胸を張ろうとしていたところに出鼻を挫かれた。昔から自分の利き手である左だけ人間化が難しい。と言うかシンプルに下手だ。隠せるように包帯を常備しているし、夏でも夏用の長袖を着るようにしている。 人間が見たら恐れ慄きそうなギョロギョロとした目がいくつもある自分の腕を隠す。人間の中学生に通う頃は古傷を見られるのが嫌だと言う偽の理由で隠していたけれど、今いるのは妖怪だけ。隠さなくても良いのではとは考えたけれど、今までの生活的に晒している方が落ち着かないとこれからも包帯の世話になることを確信した。
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