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「「あっ!?」」
次の瞬間、電気が落ち真っ暗になってしまう。慌てて裕也が外を見ると、どうやら近くに落雷し、ここら一帯停電してしまったようだった。
「裕也…怖い…」
「大丈夫、だいじょーぶ。ほら、俺もいるだろ?」
裕也は私を抱き寄せ、そう耳元で囁いた。そして、何かを思い出したのか、『あっ!?』と大声をあげたかと思うと、次は明らかに落胆した表情を見せた。
「どうしたの?」
「俺、ケーキ買ってたんだよ。日が変わる時に一緒に食べようと思ってさ」
「日が変わる時?」
そう尋ねると、裕也は真っ暗な状態でもわかるような笑顔を浮かべ、私の手を取り、手のひらに『5月5日』と記載した。
「5月5日。ハナの誕生日だろ?」
「あ…」
完全に忘れていた誕生日のことを裕也が覚えていたことに一瞬驚くも、嬉しさのあまり表情を崩す。
「なのに、停電かよ!クソ!」
「な、なら今一緒に食べようよ!」
「今?」
裕也の問いに私はコクコクと頷く。
「だって、明日まで電気が戻るってわかんないじゃん!ならおいしい状態で食べたいし…ダメ…かな…?」
「かわいい」
そう言い、裕也は私の額にキスをして、台所へ向かって行く。そして持ってきたショートケーキの先っちょをフォークで刺し、『あーんして?』と私の口元へと運んでくれた。照れながらケーキを食べていくと、裕也は耳元で囁いた。
「早いけど、生まれてきてくれてありがとう。俺の唯一のお姫さま」
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