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 耳と鼻をそばだてて辺りを伺う。今しがたの銃撃とオロチの活動で荒れ果てたアパートの室内には、つんと饐えた臭いが立ち込めていた。  そんな中に、つい数日前まで、ここで人が暮らしていた形跡があちらこちらに残されていたのを見つけ、赤尾は言葉に出来ない感情に囚われた。  3歳くらいの子供が遊ぶための、色鮮やかな知育玩具が壊れて転がっている。部屋の隅に畳まれて置かれていた子供用の衣服と靴下が、嫌が応にも目に入った。  この部屋本来の住人は、突如現れた侵獣の餌となったのだ。  丸呑みにされたであろう犠牲者は、たった今、銃弾を浴びせて肉塊にしたものを開いたところで、もう助からないのは明白だった。  小銃(ライフル)を持つ手がカタカタ震えるのを抑える術がなかった。幼い子供が犠牲になるのは、何にも増して堪えがたい。  理不尽な死と恐怖に襲われた住人を思い、片時だけ黙祷を捧げ、顔を上げる。  動かなくなったオロチの身体を引きずって退かすと、その下から白く丸いものが幾つも顔を出した。卵を産み、温めていたのだ。  オロチなど竜種のいくつかは、オスを介することなくメスのみで殖えることが知られている。卵は見つけ次第、確実に破壊しなければならない。  背嚢を下ろし、卵を回収しようとしたところで、そのうちの幾つかが動き出した。孵化を間近に控えていたのだ。回収不可能な場合は、その場で確実に殺処分しなければならない。
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