ラッキーの瞳の奥

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 「お前、顔が気持ち悪い」  冷たい目線と言葉。それだけで、ぼくを傷つけるには簡単だった。中学まではほとんど登校しないでも卒業させてくれた。追い出したかったの間違いかもしれないが、それからぼくの人生は一変した。園長から、着ぐるみの仕事をするように勧められた。ぼくはこんなぼくでも役に立つなら、しがみ付くような気持ちで始めた。  最初は戸惑いから始まった。顔を隠しただけで、こんなに人が笑顔になり、握手をしたり、抱きしめられたりと、愛される人がされることばかりだった。ぼくはこの瞬間、「愛されている」のだった。今までは園長だけがぼくを気にかけてくれた。それだけで充分だった。だけど、この「蜜の味」を知ってしまってから、ぼくの心の奥では愛に飢えていた。
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