ラッキーの瞳の奥

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 ぼくは顔を見せないだけで、人気者だ。それは“ラッキー”が愛らしいキャラクターで、その仮面を被っているから受けられる恩恵だった。“ラッキー”であることにぼくの価値はあった。その事実は、自分でもよくわかっていた。  その日、案内の女性は彼女ではなかったが、いつものように子どもたちのいる場所へと案内された。いつもの景色の中ぼくは意識的なのか偶然なのかわからなかったが、彼女がいるのが見えた。ぼくは息を飲んだ。普段着の彼女は髪を下ろし、ピンクのワンピースを着ていた。顔もいつものシンプルな化粧ではなく、潤った赤い口紅がよく似合っていた。
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