ラッキーの瞳の奥

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 「ラッキー!」  無邪気に手を振る彼女に目がいく。ぼんやりとしてるぼくに案内の女性が気が付き、注意した。ぼくは我に返り、仕事に専念した。子どもと握手をしたり、写真を撮ったりと仕事をこなしながら、彼女がこの長く並んだ列にいるのかもしれない、と心を弾ませた。いつも優しくしてくれる彼女に近づける。そのことばかり考えていた。いや、願っていた、この言い方が正しい。ぼくには人と同じ幸福を味わえない人生と決まっている。せめて、心を慰めてくれる瞬間があっても罰は当たらないはずだ。そして、神様はぼくの願いを叶えてくれた。  彼女が現れた。
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