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チョコレート。駄菓子。スナック。おせんべい。ああ、好きなおこげのやつがある。香ばしい醤油の風味と軽い歯ごたえがたまらなくおいしいのだ。買っちゃお。私は迷わずおこげせんべいを掴んでかごの中に入れた。そのあとクッキーやマシュマロなどの甘い物も突っこんでおいた。
次は飲料コーナーにむかった。ビールやチュウハイがたくさん並んでいる棚の前で足を止める。なんだか無性にお酒が飲みたかった。
渉くんはキリンビール。私はほろよいくらいがちょうどいいだろう。コーラサワー、ぶどうサワー、カシスオレンジ。全部飲んだことある味だった。ううん、他の商品にしてみるか。
「なに悩んでるの」
「どのお酒買おうかと思って」
「喜久子は下戸だからなあ。選択肢が自然と限られてきちゃうよね」
いつの間にか隣に立っていた渉くんはそう言うなり、さっと棚に目を走らせ始めた。
「これは」
ある一つの缶を取って、私に見せる。期間限定。カルピスサワー濃い贅沢。アルコール度数、五%。
「五%か」
思わず呟くと、飲めなさそう? と渉くんは聞いてきた。私の顔を下からのぞきつつ。普段は見上げている側なので、妙な感じだった。
「いや、多分大丈夫だと思う。これにするよ」
飲料コーナーをあとにすると、インスタント食品、スイーツ、お弁当、パンと結局店内のほとんどの売り場をまわりつしてようやく、私は最後に本来の目的であったおでんを買いにむかった。重さでかごの持ち手が指に食いこんで少し痛かった。
「すみません。おでんの注文いいですか」
「はい。かしこまりました」
店員さんは、私と同い年ぐらいの女性だった。長い黒髪をうしろで一つにまとめた、清潔感のある人だと思った。ウサギのような少し丸い形の目が印象的で、それはより彼女を魅力的な存在に見せていた。
左胸元のネームプレートには大谷と名前があった。私は、大谷なのか大谷なのかじゃなかったらほかになんて読むんだろうとぼんやり考えつつ、
「玉子と大根とはんぺんと餅巾着ください。あ、あとこんにゃくも。それぞれ二個ずつでお願いします」
「辛子とお箸はお付けしておきますか」
「はい」
素早い動作で次々と鍋の中からおでんの具を取り上げ、容器に入れていく。さすがはプロである。私の場合一気に注文なんてされたら最後、きっと大混乱に陥ってしまうだろうと思った。
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