キケナの花 2 side悠

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キケナの花 2 side悠

 最近薫が心なしか冷たい気がする。優しい薫のことだから、きっぱりと俺のことを拒絶したりはしない。だが、俺が一緒に過ごそうと提案すると、やんわりと断られる。  どうしてだろう? もしかして俺の気持ちが重すぎて嫌になったとか? まさか、俺じゃない別の誰かがいいと思っているのだろうか?  一人で悶々と考え込んでいると、気が滅入りそうだったので、外に出る。誰か相談に乗ってくれないか探してみるが、なぜか皆忙しそうだ。  そこで、薫の姿を発見する。薫、と呼びかけようとして、隣に誰かがいて話しかけているのに気づく。慌てて近くの物陰に隠れる。 「おはよう、捺(なつ)」  ん? 捺だって?  捺は俺の妹だ。母親は違うが。年は薫より一つ上の十六歳だ。 「……好きなの?」  二人の会話に耳をすます。距離が遠くて聞こえにくいが、捺が薫に尋ねる。 「うん。好きだよ」  照れて真っ赤になりながら、薫が言う。俺は思わずええっと叫んでしまいそうなのを慌てて押さえて、自分の部屋へと走って帰った。  とりあえず、紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせようとする。  整理してみると、薫は捺のことが好きで、だから俺と過ごすのが嫌になったということか。確か前に聞いた時は元々男が好きなわけではないと言っていたが、あまりにも心変わりが早すぎないか?  自分が言うのもなんだが、俺の妹は可愛い。輝く金色のストレートな髪に、美しいすみれ色の瞳。他国からも縁談がちょくちょくあるほど。  それにしても……、とふつふつと怒りが湧いてくる。毎日一緒に寝て、愛していると俺に囁いていたのに、俺の妹を好きになるなんて。悲しい気持ちと怒りとが混ざって、よくわからない気持ちになり、俺はふて寝することにした。
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