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キケナの花 3
「ただいま」
あかりのついていない部屋に若干違和感を感じながら、悠の部屋へと入る。最近は僕の部屋はあるけれど、悠の部屋で過ごすことが多くなっていた。
いよいよ明日が悠の誕生日。僕たちはギリギリまで準備をして、ようやくさっき終わった。かなり遅くなってしまい、もうすぐ明日になってしまいそうな時間だ。
「悠?」
いつもは優しく僕の名前を呼んでくれる彼の声が聞こえないことに、何かあったんじゃないのかと不安になる。
部屋を探すと、悠がベッドの上で寝ているのを見つけた。
「どうしたの?」
声をかけるけれど、返事がない。もしかして体調が悪いんじゃないかと思って慌てて近くに駆け寄る。
「大丈夫? 体調悪いの?」
すると、おでこに当てようとした手を急に引っ張られて、ベッドに押し倒される。
「うわぁっ」
急に天井が見えて驚く。よくわからなくて、悠の顔をじっと見つめる。暗くてはっきりとは見えないけど、寂しそうな表情が見えた気がする。すぐに悠の頭を撫でようとすると、その手を払われた。どうして、と声をかける前に悠が話し始める。
「薫、俺のことはもう好きじゃないのか?」
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