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7 side悠
俺が父上の機嫌を取るために、薫という名の獣人国の王子の世話を見ようとしていると勘違いした弟の那とようやく話をつけることが出来た。お前のように自分にとっての利益ばかり考えていると痛い目にあうぞ、と心の中で忠告しておく。
急いで駆けつけた時には、彼は部屋の中で意識を失っていた。外では雪が降っていると言うのに、部屋の中は凍えるように寒かった。どうしてこんなにひどいことができるのだろうと、一瞬怒りで頭の中がいっぱいになったが、彼を助ける方が先だと思い直す。
俺の部屋に運ぼうと、彼を抱き上げると、予想していたよりもずっと軽くて驚く。よく見ると頬が痩せているし、その頬には涙の跡があった。
彼をベットに寝かせると、暖に呼びに行かせた医者がちょうどやってくる。事情を話すと、医者はすぐに診察を始めた。
「高熱が出ています。栄養不足と寒い場所に長くいたせいでしょう。注射をうち、様子を見ましょう。部屋を暖かくしてください」
と言って注射をうつ。俺と医者は、ベットの横に椅子を持ってきて、そこで彼の様子を夜の間見ることにする。がんばれ、と彼の細くて熱い手を握りながら念じた。
医者をはじめとする俺たちの懸命な看病に反して、彼の熱は数日後も未だ下がらないままだ。医者も、
「体力が低下しているにしても、回復が遅すぎます」
と困惑しながら言うほど。このまま熱が下がらなければ、死んでしまうかもしれないとも。そんな時、暖が、あっ、と声を上げる。
「私が、彼にお会いした時に、彼はそのチョーカーを外そうとしておられました。もしかしたら何か関係があるのかもしれません」
暖が訪れた時にはもう具合が悪そうだったと聞いていたが、それもチョーカーが関係している可能性がある。俺は彼のチョーカーを外そうとしたが、力が強いはずの俺でも外すことができない。よく見ると、つなぎ目がない。どうすれば良いのか途方に暮れていると、暖が遠慮がちに言う。
「あの、那様にお尋ねすると言うのはいかがでしょうか?那様なら知っていらっしゃるかも……」
「確かに、あいつに聞いてみるしかないな」
いつも外出していることが多いやつだが、幸い、今日は自分の部屋にいるらしい。俺は暖と共に那のところへと向かった。
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