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「昼飯できたぞ」
父の作る昼飯は昔から決まってラーメンか焼きそばで、ラーメンはとんこつ、焼きそばは醤油味。どちらも少し硬めだった。
「昼ごはんぐらい作ってよね」
東京へ単身赴任だった父が帰ると母は決まって顔をしかめて言う。
そんな時、父は笑いながら麺類を私たち兄弟に作ってくれた。
「そうだそうだ」
「また焼きそば?」
私は何の気無しにキッチンに立つ父に苦言を呈した。
あの時は二ヶ月、あるいは三ヶ月に一度しか帰ってこない父より、母の方が家族に近い存在だった。
昼食を作った後も父は庭の雑草の手入れから車の洗浄を母に指示されながら動く帰省を繰り返していた。
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