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4
ソースの美味そうな匂い。青のり。鉄板。テーブルの染み。コテ。食べかけのお好み焼き。
ぼうっと見つめていると
「鳴瀬君?」
奏人さんに言われて、我に返って顔を上げた。
「あんまり食べてないけど、どこか調子悪い?」
「あ、いえ。……ちょっと、思い出して」
「何を」
「……ちょっと……友達と、あって」
「喧嘩でもした?」
「喧嘩じゃないんだけど……面倒くさいっていうか」
「きみも、僕に近いところがあるよね」
手元の皿に取り分けたお好み焼きを食べて、奏人さんは言う。
「友達は大事だけど、あんまり踏み込まれるのは好きじゃないだろう」
「……そっすね」
「けど、きみたちくらいの歳なら、相手のためにと思ってお節介を焼いたりってことはあるだろう。それが大きなお世話でもね。だけど、向こうは厚意でやってるからタチが悪い」
「バッサリ言いますね」
「僕もそういうのは好きじゃないから」
彼が飲むのはお冷で、今日も酒は無しだ。
気を遣ってもらわなくてもいいと言ったのだけど。
皿にとったのをゆっくり平らげると彼は言った。
「あと、食べられたらいいよ。僕はもう」
「……ほんとに、少し食ったらいいんですね」
「うん。あ、迷惑かい?」
「いや、俺はいいんですけど。美味いし」
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