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   ソースの美味そうな匂い。青のり。鉄板。テーブルの染み。コテ。食べかけのお好み焼き。  ぼうっと見つめていると 「鳴瀬君?」 奏人さんに言われて、我に返って顔を上げた。 「あんまり食べてないけど、どこか調子悪い?」 「あ、いえ。……ちょっと、思い出して」 「何を」 「……ちょっと……友達と、あって」 「喧嘩でもした?」 「喧嘩じゃないんだけど……面倒くさいっていうか」 「きみも、僕に近いところがあるよね」  手元の皿に取り分けたお好み焼きを食べて、奏人さんは言う。 「友達は大事だけど、あんまり踏み込まれるのは好きじゃないだろう」 「……そっすね」 「けど、きみたちくらいの歳なら、相手のためにと思ってお節介を焼いたりってことはあるだろう。それが大きなお世話でもね。だけど、向こうは厚意でやってるからタチが悪い」 「バッサリ言いますね」 「僕もそういうのは好きじゃないから」  彼が飲むのはお冷で、今日も酒は無しだ。  気を遣ってもらわなくてもいいと言ったのだけど。  皿にとったのをゆっくり平らげると彼は言った。 「あと、食べられたらいいよ。僕はもう」 「……ほんとに、少し食ったらいいんですね」 「うん。あ、迷惑かい?」 「いや、俺はいいんですけど。美味いし」
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