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まだだいぶ大きく残っているお好み焼きを見て思う。
友達同士で食いに行ったりするのも嫌いなわけじゃない。
大人数で馬鹿話したり、勝手なものそれぞれ食ったりするのも楽しい。
けど、この人と食べるのはなぜか安心する。
もしこれで、俺が腹一杯だといえば、残しても怒らないだろうし、逆に足りなければ俺だけお代わりしても別に嫌な顔もしないだろう。
そう思えるのは、年上だからか、この人だからか。
年季が入ってその辺の柱や畳にも油が染みこんでいそうな店で、姿勢正しく座って綺麗な箸遣いで食べるこの人は、そこだけちょっと異質だ。
初恋の相手に生き写しのこの人は、俺にとってはそれだけで特別だけど、この人がこれだけ俺を気に入って連れ回す理由は……なんて考えながら食ってると、俺の手元を見つめていた彼が言った。
「やっぱり、もう少しもらってもいいかい」
「どうぞ?食べられるなら全然」
「きみが食べているのを見ると何かおいしそうで、また食べたくなる。行儀が悪いけど」
そんなことを言って柔らかい笑みを浮かべるのを見ると胸がちくりと痛んで、小山の話を思い出す。
好きなのはいいけど、付き合うのが難しい相手なら諦めた方がいいという。
……そりゃ、好きか何とも思ってないかといえば、間違いなく好きだ。
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