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 最初は、初恋の相手に似ているという理由だけだったと思うけど、今はこの人自身に惹かれてる自覚がある。  ただ、それがキスしたいとかそれ以上のことをしたい好きかって言われると、この人にそれを強要してまでの想いかどうかは微妙だ。  逆に、この人が俺にこだわる理由としては、地元が俺も毎年行ってた母の田舎だったこと、上京してきて初めて親しく話したのが俺だったことくらいしか思い当たることはなく……。 「あの」 「うん?」 「……聞いたことないけど、奏人さんは彼女とか欲しいと思わない……」  きょとんと見つめられて、一瞬言葉が続かず、変な間が入って 「……ように見えるから聞いたことなかったけど、そういうのどうなんですか」 俺が言うと、彼はあっさりと返す。 「思わないよ」 「……そう、ですか」  変な汗を感じてお冷を飲むと 「うん。きみは?」 奏人さんが言った。 「え」 「きみこそ、ゼミでも学内でも同年代の女の子はたくさん居るわけだから、しかも文学部なら女子の方が多いんだし、出会いもあれば、付き合って欲しいと言われることもあるんじゃないのかい?」 「……っ」  水がおかしなところに入って、思いきりむせた。  咳込む俺を 「大丈夫かい?お水もらおうか」 と奏人さんは驚きもせずに見る。
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