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特にスポーツをするわけでもないのに無駄に180もある身長では、相手が眼を伏せると表情が見えなくて、とても気まずい。
扇を伏せたような睫毛を見つめて次の言葉を探していると
「そうだ。早速で悪いけど」
急にぱちりとそれが開いて俺を見上げ、心臓が跳ねた。
朝の日射しに照らされるその瞳は、あの人のような琥珀色ではないけれど、それを除けばよく似ている顔が微笑む。
「きみ、お好み焼きは好きかい?」
「……食べますけど、また佐藤さん情報ですか」
佐藤さんはこの人と同じく教授の教え子だった研究員の女性で、食べることと飲むことが大好きで色んな店を知っているらしく。
話を聞くたびにこの人が行きたい場所が増えるというわけだ。
「店は汚いけど美味しいそうだよ」
「いいけど。でもそれなら、たまには佐藤さんに連れてってもらったらどうですか」
この人がそんなことをするはずがないのを承知で言うと
「嫌だよ。何話していいか分からない」
大人げなく唇を尖らせる。
この人は仕事関係の食事会や飲み会にはちゃんと参加するけれど、プライベートで誰かとサシになるのはすごく嫌がる。
普段は人当たりがいいから、誰もこんな人だと思っていないだろう。
「じゃ、なんで俺はいいんですか」
「さあ。気が楽だからかな。あ、飴食べるかい」
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