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「本当に今日は冷えるね。今エアコンつけるから」
「……っ、あの!」
行こうとしたのを、腕を掴んで止めると、彼は黙って振り返る。
「あ……」
今、気づいた。
キスとかその先のことをこの人に強要するのはどうだろうなんて呑気に考えてたけど、そうじゃない。
俺の感情は、そんなあやふやなものじゃなかった。
わずかに首を傾げて言葉を待つ奏人さんに、俺は言った。
「……俺……奏人さんが好きだから、女の子に言うような意味で。……だから、そういう目で見られるのが嫌なら、俺を家に上げたりしないで欲しいんです」
数秒、瞬きもせずに俺を見つめたかと思うと、花が綻ぶみたいに笑う。
「面白い子だねえ。やっぱり、きみは」
「すいません」
「どうして謝るんだい」
「……分からないけど。……つか、告って面白いとか言われてる時点で、ダメな奴じゃないですか」
「そんなことは言っていないよ。――――小山君が、きみの好きな人を聞き出したかったのにとうとう口を割らなかったと言っていたから、僕が聞いたらどうするかと思っていたのに、先に言ってしまうから」
「へ?」
今それを聞かれた訳でもなく、もう肝心なことは言ってしまったというのに、全身に恥ずかしさが走って頬と耳が熱くなる。
「……そんなこと考えてたんすか?」
「うん。小山君と話した時からね」
奏人さんは悪びれない笑みを浮かべる。
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