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 ひとつ溜息をつくと、奏人さんは俺から少し体を離して、顔を上げさせる。  と、さっきより乱暴に塞ぐようにキスをされた。 「ん……っ」  最後に置き土産みたいに上唇を噛んで離れると、奏人さんは言った。 「……放してあげるけど、まだ話は終わってないからね。今日は帰らせないからそのつもりで」 「へっ!?……いや、俺……え?」  それはどういう帰らせないなのか、俺まだそこまでの心づもりは出来てないんだけどと口を挟む隙を与えず、奏人さんは電気とエアコンをつけ 「とりあえずお茶かな」 とガスコンロに薬缶をかけて湯を沸かし始める。 「何ぼうっとしてるんだい。そんなところに突っ立ってたら寒いだろう。こっちにおいで」 「……はい」  言われるまま歩み寄ったものの、どう振る舞っていいのか分からない。  だって、今のって結局どうなったんだ?  まだ話終わってないって、怒ってるんだろうか。  だいたい、この人は俺が好きだとは一言も……。 「匠海」 「はい!?」  声が裏返って、俺の顔を見た奏人さんは吹き出して笑った。 「何飲むか聞こうとしただけだよ。大丈夫だよ。気持ちが通じたからって、いきなり取って食ったりはしないよ」    「……はい」 「何を飲むって言っても、僕はコーヒーは飲まないから、お茶の種類しか無いんだけどね」  ……あ。  その、どこか嬉しそうな、照れくさいような表情を見たら、分かった。 「……あったかいのなら、何でもいっすよ」 「うん」  この人が俺をどう思っているかなんて、最初から全部顔に出ていた。  ただこれからは、年上とか立場とか男同士とか関係なく、ありのままに受け取ればいいだけなんだと。   
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