1/5
前へ
/58ページ
次へ

 1月末。  最後の試験を終えて教室を出ると、先に出た小山が待っていて白い歯を見せた。 「終わったなー。おつかれ」 「おつかれ。てか、まだレポートはあるけどな」 「まあ、なんとかなるでしょ。とりあえずホッとしたわー」  小山は両手を上げて伸びをすると、俺の方を向いて言った。 「今日はバイトは?」 「あるけど、遅番だから別に急がないけど……何かある?」 「良かったら、ちょっと付き合ってくれる?」  連れて行かれたのは、あの時のファーストフードだった。  同じ席で向き合うと、小山は言った。 「えっと……納会の件さ、あれから休みになっちゃったし、学校始まっても試験でなかなか話せる時もなかったから、うやむやになってたけど……いろいろ、悪かったな。余計な世話焼いて」  俺が黙っていると 「なんだよ。まだ怒ってる?」 苦笑いを浮かべる。 「いや、そうじゃなくて……」  あんまり素直に言われたもんだから、面食らってたんだけど。 「……謝るところは謝るのが、お前らしいなって。……ちょっとビックリしてた」 「まあ、ひとこと謝って、その後の報告みたいなのもしたいなと思ってたから」 「報告って……」 「え?……」  俺の顔を見て、ぷっと小山は吹き出す。 「別にお前に報告しろなんて言ってないよ。その顔見たら言わなくても分かるけど」  ぶわっと顔に熱が上って、耳まで赤くなってるだろうことは鏡を見なくても分かる。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加