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「そうだ。そういえば小山、橋本と付き合うことになったみたいですよ」
ふと思い出してその話をしたのは、俺の中ではいい話だったし、この人もまだ橋本のことを気にしてるなら、それを話したら安心するんじゃないかという気持ちもあったからだ。
最初は
「へえ。良かったね。どちらも」
なんて興味持って笑顔で聞いていたのが、だんだん顔が曇って来て。
ポテトおごれと言われたあたりで、むすっと唇を結んで無言になって今に至る。
俺より十も年上のくせに、いや離れてるから余計なのか分からないけど、この人のヤキモチっていうのは相当強い。
前にも、バイト先で女の先輩にからかわれた話をしただけで、しばらく口きいてくれなかった時もあった。
「……あの」
卵と三つ葉を入れた雑炊はめちゃくちゃ美味かったけど、どうにも落ち着かなくて、途中で箸を置いて言った。
「……その……友達でも、そういうのムカつきます?」
「別に」
と、俺の方を見ずに杯を傾ける。
いや、明らかに怒ってるだろ……。
「……ごめん。飯の途中で行儀悪いって言うだろうけど」
立ち上がって反対に回ると、俺は奏人さんの隣に座って言った。
「怒ってるんじゃないなら、そんな顔するなよ」
「何とも思っていないよ」
「だからぁ……」
大人げなくむくれた顔をした恋人を、膝立ちになって胸に頭をかかえるように横から抱きしめた。
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