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「嫌かい?」
「……嫌じゃない」
上品そうな顔した裏でそんなこと考えてると思うと、なんだか堪らなくなって胸に顔押しつけた。
奏人さんはくしゃりと俺の髪に手を入れて、頭を撫でる。
さっきまでヤキモチ焼いてふてくされてたのなんか嘘みたいに。
胸の音が聞こえて、背中に手を回してぎゅっと抱きしめると奏人さんが笑った。
「なんだい。甘えて」
「っせーな。いいだろ。さっきまであんた俺に甘えてたんだから」
「……甘えてた?」
「……ように俺には見えた」
少し、間があって
「そうだね。そうかもしれない」
笑ったような声がした。
「なんで嬉しそうなんだよ」
「きみと居ると、今まで知らなかった自分を知ることが出来るから、かな」
……そりゃ俺だって、自分がデカい体丸めて男の胸に顔埋めてるとか、考えたこともなかったけど。
「……なあ。だったら、あんたがヤキモチ焼いたり、ふくれっ面見せたりするのも、俺だけだよな?」
「そういうことになるね」
相手からは見えないのをいいことに、だらしなく顔がニヤけてくる。
俺だけ、っていい言葉だ。
そう考えると、ヤキモチもまあ可愛いかなって思えたりする。
「ところで、匠海。いつまでそうしてるんだい」
「……いーだろ。俺さっきまであんたの顔色窺いながら飯食ってたんだから」
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