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エピローグ・春 1
その人が、正直あまり俺は好きじゃなかった。
教授が前の大学に居た時の教え子だとかで、この秋に急に呼ばれてきて
「葛城奏人です。よろしく」
なんて挨拶する姿は育ちの良さそうな好青年の印象だったけど。
俺の知らない間に入学した頃からの友人を飯に連れ出したり、そのくせ俺たちには愛想は良いけれど一定の距離を置いている感じで。
なんか胡散臭い、と思ってる間に友人はどんどん彼と親しくなり、あげく彼と居るのを見かけた直後に話しかけた時の反応は、まるで好きな女の子と居るのを目撃されて焦る男のようになってしまった。
面白くない。
いや、同性でもいいから、気を許せる相手を作れと言ったのは嘘じゃないけれど。
思ってたのと違う、というのはこういう時に使うんだろう。
あんな得体の知れない男を想像していたわけじゃない。
だったらどういう男なら良かったのかと言われたら答えに困るけれど……。
「鳴瀬君たち、その後うまくいってるのかな」
4年生になった春。もう学校近辺の桜は散ってしまったものも多かったけれど、まだ残ってるところもあり、花見がてらの散歩をしていた時、彼女が言った。
付き合うことになって2か月ちょっと。
もう何とも思ってない、ってことはないだろうけれど、彼らの名前を出すことに抵抗はなくなったようだった。
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