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「寒っ……」  12月も半ば、学校ももうすぐ冬休みに入る頃。  地下鉄の駅から地上に出ると氷のような空気を感じてマフラーを巻き直した。  太陽は空気に反射するみたいに眩しいのに、風は頬が切れそうに冷たい。  はぁ、とガキがするように白い息を吐いてそれが青い空に消えるのを見ていると 「鳴瀬君。おはよう」  背中から声がして、振り返った。  早足に追いついて来たのか、ネクタイをかっちり締めたスーツ姿にダウンコートを着た奏人さんは白い息を弾ませていた。 「おはようございます。すげえあったかそう、それ」 「これ?」 と奏人さんは自分のコートを見下ろす。 「少し前から着てるけど、きみ見たことなかったっけ?」 「あるけど。今朝寒ぃから。いいなあって」  奏人さんは笑って言う。 「僕はきみのマフラーの方が暖かそうに見えるけど」 「いやいや、これ高校生ん時から使ってるから、もうヘロヘロなんすよ」  首元を引っ張ってみせると 「……物持ちがいいのは良いことだけれど、バイトしてるんだし、新しいのを買ってもいいんじゃないのかい?」 心配そうに見上げる。 「んー……まあ、そうなんですけど。あんまり。服とかに使うのって勿体ない気がして」 「じゃあ何ならいいんだい」 「奏人さんと飯食いに行くとか」  ぷ、と彼は吹き出す。
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