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「精霊様はここのホタルに会うため、飛んで来たんだ」
「どうして、精霊様はホタルに会おうとしたの?」
「ここのホタルはな、死んだ村の人たちが魂を移した姿なのさ。村の守り神である精霊様は、夜になるとホタルたちと一緒にお話しをするためにここへ来る」
何だか、神秘的な話だった。夜に聞こえてくる物音は妖怪ではなく、村の守り神の音。そして、ここで飛び交っているホタルたちの中には自分のご先祖様もいるということ。それだけ清廉なこの村に、妖怪なんて来ることはない。僕は、今まで疑ってしまったことを祖父に、そしてこの村に申し訳なく感じていた。
それから、僕は祖父母の家でも恐れずに夜を過ごせるようになった。夜になると恐怖を感じてしまう弟にも優しくその話ができる兄に成長したのだった。
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