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「精霊様って?」
「この村を守る神様さ」
「どこへ行くの?」
「この時期は、そうだな。多分、あそこだろうな」
「あそこって、どこ?」
「行きたいか?」
祖父がぎこちなく笑った。片頬だけを上げながら。僕はもしかしたら精霊様に会えるかもしれないと思い、力強く頷いた。
一体、どこに精霊様が飛んでいったのだろう。そんなことを思いながら祖父と歩調を合わせていると、芝生の広がっている川べりで急に祖父の足が止まった。
「ここだ。精霊様は、ここにいる」
僕の目の前に広がっていたのは、これまでの人生で一度も見たことのない光景だった。そこにはたくさんのホタルたちが流麗な光の残像を浮かべながら、宙を揺蕩っていたのだ。
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