一.

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一.

「ねぇ、覚えてる? あんた小っちゃい頃、ノート何冊にも渡る小説みたいなのを延々と書いてたでしょう。 小三ぐらいだったかしら。 久し振りに見付けちゃって、懐かしいからあんたも見てみたら? 小説、まだ書いてたりする? あんたは天才よ。 もしまだ書いてるなら、頑張ってね」 母親から送られてきた仕送りの段ボールには、諸々の生活用品と共にその手紙と二十四冊のノートが同梱(どうこん)されていた。 「天才だったら、どんだけ楽だっただろうね……」 ため息交じりにも、母親とノートの懐かしさに口元を(ゆる)ませながら、いったん箱から離れて机上(きじょう)のパソコンの電源を入れた。
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