十三.

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十三.

「あぁ、くそ、スペースが無いってのにまた誤字だ、語順も逆の方が良かった……いや待て、もっと先でこの台詞を伏線とすればむしろ……」 パソコンならいくらでも書き直して文字列を整えられる。 最近の僕は上手く書こうとするあまり、小説をただの文字列としてきれいに配列処理することばかりに気を取られていたのかも知れない。 こうして手書きの一発勝負で書いていると、構成順序、一段落、一行、一文字も無駄にできず、集中の深さが全く違う。 いつもには無い熱い何かが全身に湧き上がっていた。 それは()()まされた精神が極まって分泌されたアドレナリンか、それとも、これが。 初夏の昼下がりの陽光も(あい)まって汗だくになりながらも、 「さっきの所と(つな)がりが悪いな……くそ、書き直したい……いや、いける、エピソード追加してキャラを増やして回想を使えばこのままいける、よし、もっとだ、もっと盛り上げられる、ここからもっと……!」 僕の手は止まらない。
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