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十五.
やがて朦朧としながらも「了」の一文字を壁際の床に記すと、大きな息をついて仰向けに倒れ込んだ。
そこで初めて、四方の真っ白な壁が文字列に埋め尽くされて真っ黒になっている惨状を冷静に眺める。
「……これ……絶対敷金返ってこないな……」
僕は少し笑いながら、一瞬で眠りに落ちた。
その後、目覚めてから、二週間ぐらいかけて、部屋中に散らばった手書きの原稿をスマホに写しつつ細部を修正して清書し、ちょうど締切が数日後だったとある新人賞に応募した。
最終の結果が出るまでの間、僕はわざとバイトを増やして忙しく働いた。
燃え尽きが著しく、書くべき話が全く浮かばず、書こうという気すらも起きなかった。
小説サイトにも入らずに、僕はただ淡々と日常を暮らした。
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