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四.
書くのをやめる。
やめれば自由になれる、楽になれる。
この無間地獄から解放される。
それは最近いつも脳裏をかすめつつも必死に考えないようにしていることだ。
本当に実行してしまったら、自分の積み上げてきたものを全否定し、自分の人格そのものを捨ててしまうようで、それはとても恐ろしい事に思える。
『まぁな。
小説を書くってのは、一時間で二千字書くとしてもだ、長編一本の最低十万字に対して五十時間かかるんだよ。
それが一銭にもならねぇなら仕事として成立しねぇだろ。
時給千円でも五十時間あれば五万を稼げるんだ。
一攫千金、一発勝負で賞金印税狙いの俺みたいなのにとっては、出して即大賞とならねぇようじゃ小説は効率が悪いし、実際そうならなかった。
なら何年も続けるもんじゃねぇ。
まぁ鳴神纏は俺とはスタンス違うし、自分のやり方貫いて頑張れよ』
天誅KOさんはハードな本格アクション小説一本のみをずっと連載していて、掲示板でも作風同様のちょっと悪い感じの口調がかっこいいなぁと、密かに憧れていた。
そしてそんな人なので、この決断も無くは無いか、とは思った。
小説はそんな単純計算で価値を測れるものでは無いだろうが、しかし確かに、公募に通りもしない作品を書いている時間を労働に回せば、僕の執筆速度の最大値を一時間で四千字として、僕の費やした千八百万字は四五〇〇時間、時給千円で四五〇万円に相当する。
最低でもこれだけの額を、僕は取りこぼし続けてきたことになる。
これから、も?
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