七.

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七.

彼女は、以前は僕らと並んでこの掲示板の常連の友人だったが、昨年末に某公募で大賞を受賞してデビューした、今ではある意味で先輩、先生だ。 丁寧(ていねい)(やわ)らかな言葉遣いだがいつも核心を突いてくる。 女性向けの時代ミステリーであるデビュー作も、まさしくそういう作風だった。 『感動……感動って……そう言えばどうやってやるんでしたっけ』 ずっと悩んでいた自分に足りないと思われるものをいきなり指摘され、やや狼狽(ろうばい)して僕は思わず冗談っぽくレスを返したが、 『真面目に御思慮頂けないのでしたら、大変申し上げ(にく)いのですが、恐らくは今後も二次を通る事は(かな)わないと存じます。 どうか御気分を害されませんよう。 公募に対する貴方様の気概を後押し致したく存じての忠言にて御座いますゆえ』 という返事に、心臓をぎゅっと(つか)まれたような思いに襲われ、僕はそれ以上何も書き込まずにサイトを閉じた。
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