九.

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九.

「伝説の究極王・RAISEI」などと銘打(めいう)たれたその小説は、「雷星(ライセイ)」という名の小学生が異世界に飛ばされて、そこは熾烈苛烈(しれつかれつ)を極める超世界大戦のど真ん中で、飛ばされついでにあらゆる特殊能力を身に付けている雷星が敵を倒しまくってその世界の王になるという話だった。 語彙(ごい)も少ないし表現も稚拙(ちせつ)だし、強敵が現れてはぶっ倒して、その時に助けた女子に好意を持たれては仲間に加えていくだけという展開も単調だし、作品としてはやっぱり小学生の限界だな、とは思いつつも、なんだろう、何かよくわからない、とんでもなく熱い(たぎ)りを感じる。 欲望をそのまま書いたようなものだから当然なのかも知れないが、それだけでは無い、「もっと書きたい、もっと伝えたい」という、全力の切磋琢磨(せっさたくま)も感じる。 一言で言えば「情熱」だろうか。 だがそれにしても小説としては不出来だ。 「キャラも設定もストーリーも、もっと深く、もっと広く、もっと面白くできるだろ……」 つぶやいて、パソコンのメモ帳を開く。 「これを原案としてプロットにするならだいたいこんな感じかな。 さすがに主人公が小学生ってのはきついし、やっぱりここは高校生で、最初から全能力をコンプしてて毎回完全勝利なんて何の達成感も無いし、モテまくってないでたまにはライバルでも出して男のバトルと友情とかも……」 などとなんとなく思い付くままに書き込んでいると、突然、キーボードをいくら叩いても文字が進まなくなった。
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