僕のスケッチ

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 たいして特別なこともない冬の午後。  にわかに分厚い雲の隙間から日差しが顔を出した頃僕はスケッチブックを片手に家を出た。だいぶ風情なやつだと思われるかも知れないがそうでもない。ただ五感の感じるままに手を動かしていくだけだ。  いつもと同じ公園。  寒い冬には誰も遊ばないのか、がらんとしていた。子猫が1匹、寒そうにうずくまりながらこちらを見つめていただけだ。僕は 「よっこいしょ」  とベンチに腰掛けて 「ふうっ」  と息を吐き、空を見上げた。  さっき照っていた日差しもまた分厚い雲に隠れてしまった。  ポケットから出した短くなったちょっと描きにくい鉛筆がシャッシャッと心地よく紙の上を滑り出した。みるみるうちに子猫の完成だ。子猫の瞳に注意して描いてみた。寒そうな子猫に一応完成した絵を見せてみたら「ニャー」と一声鳴いただけだった。
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