母ちゃんのハナシ

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ところで、どのタイミングでどんな流れで二人が付き合ったのかというと…。 「母ちゃんの方から告白してきたからなぁ」と父ちゃんは言った。 「ねぇ、なんで君みたいな子が、俺なんかを相手してくれるの?」 出会ってまだ二日目の日。 ドライブ中のことだった。 やたらと二人きりで自分を連れ回す母ちゃんに、父ちゃんは聞いた。 「えー?なんでって言われても…」 前を見て運転しながら、母ちゃんは答えた。 サングラスをかけているせいで目は見えなかったけど、口元は面白そうに笑っていたそうだ。 風に髪がなびいて、その様子はまるで海外のセレブのようですごく絵になっていたと父ちゃんは言った。 「なんとなくやで、なんとなく!なんとなくさ、好きやねん!あんたのこと!」 母ちゃんは白い歯をニッと見せて、また笑った。 「え!す、好き?!俺を?!」 突然の告白に、父ちゃんは戸惑った。 「うん!好きかも!ってか、好きやわ!多分!いや、絶対!」 運転しながら、母ちゃんは前に向かってそう叫んだ。 「ところであんたは?あたしのこと好きー?あ、もしかして日本に彼女でもおる?」 「い、いるわけないよ!俺も…す、好きだよ!」 父ちゃんは当時22歳ながら、まだ一度もも彼女ができたことがなかったそうだ。 自分の父ちゃんながら、ちょっぴり可哀想だ。 写真を見たところ、顔はそんなに悪くなかったのに。 「なんて?聞こえへーん!」 母ちゃんはそう言って、きゃははと悪戯に笑った。 「だから…っ、好きだよ!!」 「はははっ愛の告白やん!」 「君が言わせたんだろ!」 「あはっ、面白いわマジでキヨくん。じゃあ、あたしら両想いやな!」 「両想い…」 父ちゃんの顔はまるで少年のようにぽっと赤くなった。 そして、母ちゃんはこう言った。 「付き合おーよ、あたしら!まだ昨日会ったばっかやけどさ、こういうのもありやと思わへん?」 「あり」もなにも、一度も彼女が出来たことがない父ちゃんが、自分とは何もかも違う世界に住んでいるような美女に告白されて、断らないはずがなかった。 「うん」と父ちゃんは即答した。 こんな感じで、父ちゃんと母ちゃんは出会って2日目に付き合ったそうだ。
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