母ちゃんのハナシ

ハワイのワイキキビーチってところで、父ちゃんは母ちゃんをナンパしたらしい。

人生初のナンパだった、らしい。

３人組で浜辺を歩く日本人らしきビキニの女達を見つけた父ちゃんは、山本のおっちゃんとジャンケンをして負けた方が声を掛けるということになり、ちゃっかり負けてしまった。

「あの…日本の方、ですよね？写真、撮ってもらえませんか？」

第一声、田舎者の父ちゃんは母ちゃんにそう声を掛けた。

写真を撮ってもらうことをきっかけに仲良くなろうという戦略だったそうだ。

緊張のあまり、その声はかなり震えていたらしい。

「え、写真？あぁ、ええよー！」

振り返ったそのビキニ美女に、父ちゃんは一目惚れした。

引き締まった体はとても鍛えられているようで、腹筋が割れていたそうだ。

しかも巨乳。そしてプリっとしたお尻。

胸元まで伸びた黒くて綺麗な髪の毛。

こんがり灼けた肌に、白い歯がよく映えていたという。

俺の町にこんな綺麗な人はいない、と父ちゃんは思った。

母ちゃんは、父ちゃんが生きてきた２２年間の中でみた一番綺麗な人だったそうだ。

母ちゃんが一緒に歩いていた他の２人も綺麗だったけど、母ちゃんが一番輝いていた、と父ちゃんは言う。

「おい、山本、いいって！」

「お、マジか！あ、ありがうございます…」

今まで見たことのないイケイケな女達に、山本のおっちゃんもたじたじだったようだ。