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「さぁどうぞ、入ってください」
おばさんに案内されるがままに、オレ達は家の中に入った。
すごく広くて、綺麗な家だった。
窓からの景色には大都会が広がっていて、オレは思わず見惚れてしまいそうになった。
「お父さん、来てくれたで」
奥にあるリビングに入り、ソファーに座っているおじさんにおばさんが声を掛けた。
「ごっほん。あぁ、よく来てくれたね」
おじさんは咳払いをして、読んでいた新聞を畳んでテーブルに置いた。
「なんか気恥ずかしいみたいでね、あの人、まともに読んでないくせに読んでるふりしててんで」
おばさんは悪戯に笑いながら、おじさんに聞こえない声でオレ達に囁いた。
「…いやぁ、お久しぶりやね」
おばさんよりも少し歳上に見えるおじさんは、眉毛が濃くて顎にヒゲがあって、ダンディで渋い感じの人だった。
「こちらこそ、ご無沙汰してます。お義父さん」
父ちゃんがおじさんに言った。
「あぁ、キヨくん…変わらんなぁ。あのな、その…すまんな、あの時。ホンマに、すまん。大事な一人娘を亡くして、もうめちゃくちゃショックでなぁ…ひどいことばっかり言うてもた。あれから、後悔しててん。でも、また君の顔見て謝る勇気すらなかってん。ホンマ、情けない親父やで…」
おじさんは立ち上がってそう言って、父ちゃんに頭を下げた。
「そんな…謝らないでください。僕が悪いんです、全部」
「君は悪くない!」
「…もうやめなさい、そんな話は。誰も悪くないねんよ。ね、八重子さん?」
父ちゃんとおじさんにおばさんが割り言って、ばあちゃんに振った。
「…えぇ、そうですね」
ばあちゃんは少し遠慮気味に、苦笑いをして答えた。
オレが生まれてから初めて両家顔合わせをしたみたいで、ばあちゃんはおじさんとおばさんと何度か会ったことがあるということを、オレは行きの車の中で聞かされていた。
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