母ちゃんのハナシ

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「由美子の部屋、全部そのままにしてるねんけど。入る?」 泣いているおじさんの背中を「もう情けないなぁ」と言って摩りながら、おばさんがオレ達に聞いた。 「入りたいです!」 オレは即答した。 案内されるがままに入った母ちゃんの部屋は、女の人の部屋とは思えないほどシンプルで落ち着いた雰囲気だった。 白と黒で統一された家具達。 その中に一枚、カラフルに描かれたライオンの絵が壁に掛けられていて、すごく目立っていた。 「これね、由美子が描いたんよ。上手でしょ」 絵を見つめるオレにおばさんが言った。 「…凄い。かっこいい」 すごく魅力的だった。 オレはその絵をいつまでも眺めていられそうだった。   「あ、これ、香水…」 父ちゃんが、テーブルの上に置かれたガラスのボトルを手に取った。
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