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おじさんが線香の束に火を点け、お墓に供えた。
すると線香から出た煙は、空までいくんじゃないかと思うほど上に上に上がっていった。
強く、逞しく、煙は上がっていった。
「いやぁ、すごいな今日。今までこんなに燃え上がったことないで」
驚いた様子でおばさんが言った。
「多分、由美子が喜んでくれてるんやろ。“家族”が来てくれて」
おじさんがぼそっと、蚊の鳴くような声で言った。
オレ達は線香から出て空に向かって上がっていく煙を、みんなでじっと見つめた。
ーー母ちゃんの声が聞こえた気がした。
「ありがとう」にも「ごめんね」にも聞こえた。
オレの記憶のずっと奥の片隅に、母ちゃんが現れたような気がした。
忘れてしまっていたけど、母ちゃんはずっとオレの中にいた。
分からないけど多分、きっと、いつもオレの傍にいた。
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