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「鈴木。その事業構想、うちの課にも何冊かあるよ」
「え?」
「構想から概略まではうちの課が担当してたみたい」
「マジで!」
鈴木の目が輝く。
「昼一、おたくの課にお邪魔するわ」
「いいよ。1つ貸しね」
みかげは、埃だらけの胸を張って言った。
「オレは借りは作らない主義なんだ。お礼と言っては何だけど、今度の日曜、駅前デートしよう」
「は?何言ってんの?デート?鈴木と?」
なぜそれがお礼になるのか全く分からない。
「駅前構想を探るデートだ」
「……でも、何で私が鈴木と……」
「野中。課の所管事業は把握しておいて損は無いよ。それに―秘書室の情事―を愛読書にしてること、バラされたくなかったら付き合った方がいいんじゃない?」
「……」
全くひどい脅しだ。でも―――鈴木となら…デート…楽しいかもしれない。
「まあ、鈴木がどうしてもって言うなら…」
返事を待つ気がないのか、鈴木はさっさと書庫の重い扉を開けた。
扉の前で振り返る鈴木。
みかげの瞳に彼の笑みは妖艶に映り、彼女のまだ埃まみれの胸がトクンと跳ねた。
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