暗闇から始まる…

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「うーん……」 デスクトップパソコンのメールとにらめっこをする。またしても分からない事に遭遇だ。 (これは過去の経緯を知らなければ、回答できないなぁ) 本社の部は転勤が早い。2年くらいで転勤になるのでたった数年前の事を誰も知らない。 各事業担当も自分の事業の事しか知らないので、隣の席の先輩に聞いても答えを得られないことが多い。 頼りの前任者は、またしても韓国に出張中だ。 (そうだ、8階に書庫があったっけ……) 先日教えてもらったばかりの書庫へと急いだ。 部内の各課共用の書庫だ。 照明が間引かれた薄暗い廊下に立ち、重いドアを静かに開ける。 「失礼しまーす……」 書庫の鍵は開いていた。電気も点いている。 (先客がいる……) 書庫は広くは無いが、天井まで届く書棚にぎっしりと書籍やファイルが詰まっている。 書棚は左右に動くようになっていて、丸いハンドルが付いていてる。 (ちゃんと整理すればいいのに……) 大量のファイルが、床に置いた段ボールにも乱雑に入っていた。 随分前から置かれているのか、埃をかぶっている。 室内に誰かが居るのだろうが、書棚に阻まれて姿が見えない。 (わざわざ行って声を掛けるべきだろうか……) 2度目に入室した書庫のマナーなど知らない。 (まあいいや) みかげは丸いハンドルを回し、早速ファイルを探し始めた。
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